2023年、2024年と、立て続けに国際コンクールで優勝したロシア出身の超実力派ピアニスト、アンドレイ・ググニンが先月、台湾の台南と台北でリサイタルを行いました。台北の公演に行ってまいりましたのでレポートいたします。
コンサートレポート
日時:2024年5月25日(土)19:30より
会場:國家兩廳院
ピアノ:スタインウェイアンドサンズ
アンドレイ・ググニンさんは2023年にも台湾でコンサートに出演しており、その際はNSO(国家交響楽団)と共演して、ラフマニノフのピアノ協奏曲第3番を披露しています。公演はとても好評で、今年2024年は台南・台北の2か所でリサイタルを開催しました。台北の公演は、24日の台南(於:台南大学「雅音樓」)に続く、第2日目の公演でした。
この日の客層も平均年齢がとても若く、話題の実力派ピアニストの演奏を一目見ようと、音楽を学んでいる人、ピアノ好きの人が多かったように感じました。また、プログラムにバレエ音楽でお馴染みの「くるみ割り人形」があったからか、特に10歳未満のお子さんがいつもより多かったように思いました。お子さんはドレスアップして聴きに来ていてみんなとても可愛らしかったです。
公演に先立ち、台北のスタインウェイアンドサンズショールームにてリサイタルの宣伝記者会見も行われました。ネットニュースで、ピアノの前に座ってカメラにポーズをとっているお写真を見たとき、足元のファッションに目が行きググニンさんの靴下かわいいと思っていたのですが…靴下の話題、続きはまた後ほど!
マスタークラスも開催!
台北では2か所の大学にて、公演日程前にググニンさんによるマスタークラスが開かれました。リサイタルのチケット購入者は申し込みの上、無料で聴講できるマスタークラスでした。日本の公演の際にも、ググニンさんによるレッスンが行われたようです。台湾2日間のマスタークラスでは下記の曲目のレッスンが行われました。ピアノを学んでいる学生にはとても嬉しく、貴重な機会ですね。
5/22(水)台北市立大学 芸術館演奏ホールにて
- ベートヴェン: ピアノ・ソナタ第23番「熱情」ヘ短調 Op.57第一楽章
- シューマン:アレグロ ロ短調 Op.8
- ショパン:バラード 第1番 ト短調 Op.23
5/23日(木)国立台北教育大学 芸術館2階にて
- モーツァルト:ピアノ・ソナタ第13番 変ロ長調 K.333
- プロコフィエフ:ピアノ・ソナタ第7番「戦争ソナタ」変ロ長調 Op.83
- ラヴェル:左手のためのピアノ協奏曲 ニ長調
本日のピアニスト🎹アンドレイ・ググニン
アンドレイ・ググニンさんは1987年モスクワ生まれのピアニストです。
コンクールでの輝かしい成績は、冒頭に紹介した2023年ドイツピアノ国際アワード、2024年ドバイでのクラシックピアノ国際コンクール、2年立て続けの優勝にとどまりません。2013年ベートーヴェン国際コンクール第2位、2014年ジーナ・バッカウアー国際コンクール第1位、2016年シドニー国際ピアノコンクール第1位という素晴らしい実績を持つピアニストです。
2022年からはロシアを離れアムステルダムを拠点に、各国の音楽祭に出演するなど、世界を股にかけて演奏活動をしています。平和への想いを語り、自身とラフマニノフの境遇を重ねて想いを巡らせながらプレリュードを奏でる素敵な動画がYouTubeにアップされています。演奏は感動的です。ぜひご覧ください。
こちらの動画ではドイツのコンクールで披露した「くるみ割り人形」が聞けます。
本日のプログラム
グリーグ:ノルウェー民謡による変奏曲形式のバラード ト短調 Op.24
チャイコフスキー(プレトニョフ編曲):バレエ音楽「くるみ割り人形」Op.71
🎵♪ 途中休憩 ♪🎵
カール・ヴァイン:ピアノ・ソナタ第2番
ヴァレンティン・シルヴェストロフ:3つのバガテルOp.1
ストラヴィンスキー(アゴスティ編曲):バレエ音楽「火の鳥」組曲
ステージに登場したググニンさん、スラッと背が高くて、足も長くスタイル抜群!
本当にステージに映えるピアニストです。黒いスマートな衣装にピカピカの靴が素敵でした。ピアノに向かうと、まずはピアノの上に両手を置いて、ステージの上をしばし仰ぎ見、集中。そして演奏を始めました。
グリーグの演奏は詩的ながら緻密なピアニズムも伝わってきて、初っ端からグイグイ引き込まれてしまいました。「くるみ割り人形」の演奏は、バレエの生き生きとしたイメージが浮かぶ情感豊かな演奏で、何よりググニンさんご本人から演奏を楽しんでいる感じが伝わってきました。ピアノっていいな、ピアニストってすごいなと、当たり前のことですが、この夜の演奏会では、なぜかシンプルに、強く再確認させられました。
後半では、オーストラリアの作曲家カール・ヴァインと、ウクライナの作曲家ヴァレンティン・シルヴェストロフの楽曲を披露し、ここでは特にググニンさんのプログラム選曲への思い入れを感じました。「火の鳥」の演奏は全会場度肝を抜かれたような感じで、ため息をつきながら拍手しました。カーテンコールを重ねるたびに会場の歓声がどんどん大きくなっていきました。
歓声と拍手に深々とお辞儀で応えるアンドレイ・ググニン。
本日のアンコール
ブレーメンフェルト:左手のための練習曲
プロコフィエフ:ピアノ・ソナタ第7番 変ロ長調「戦争ソナタ」 第3楽章 Op.83
すごいものを見たぞ!という感激の余韻の中、アンコール1曲目「左手のための練習曲」の演奏でも会場がざわめきました。美しい演奏に、個人的にも感激したことがあります。このときまで忘れていたのですが、中学生の時、右手を失った男性ピアニストの方が学校へ演奏をしに来てくださって、その片手の演奏を聴いた感動のことを思い出したのです。あの日ばかりは泣き子も黙るというか、やんちゃな生徒も「すげ〜」と演奏を聴いていて、全校生徒大集合の体育館にいつにない一体感があったことを思い出しました。あの日のことは本当にすっかり忘れていたのですが、ググニンさんのステージのおかげで思い出し、ピュアな気持ちになりました。ググニンさん謝謝!
そして、靴下について続きのお話…
私は当日、ステージ上のググニンさんの靴下が白っぽいかな…?と気になりつつも、後ろの方に座っていてよく確認ができなかったのです。ところが主催企業様が後日、Facebookに今回の公演ツアーを振り返る素敵なスライドショーを作ってくれていました。その中にググニンさんの靴下のお写真が!オリエンタルな青と白のデザイン、かわいいです。
会場は中正(蒋介石)記念堂の広場にあり、このブログでも何回も登場している中華風の音楽ホールです。台湾の雰囲気に合わせてコーディネートを選んでくださったのですね。これは世界各国リサイタルでの靴下チョイスも大変気になります!
広場を囲む青と白の中華風の壁↑ ググニンさんこの雰囲気にマッチさせてくれました。
スライドショーには上で紹介したマスタークラスの様子も収められています。
リサイタル終了後は、CD購入者との記念撮影会でファンと触れ合ったググニンさんですが、なんと会場で販売されていたプログラム冊子には、もう直筆サインが書いてありました。忙しい中、一体何枚サインをしたのでしょう? 靴下といい、直筆サインといい、演奏会の雰囲気といい、ググニンさんのファンへのサービス精神が伺えました。
芸術家としての宿命を背負い平和への想いを胸に世界で活躍するググニンさん、訪れる各地で演奏会を楽しみ、音楽の素晴らしさを伝える使命を持った真のピアニストなのだと感じさせられ、すっかり魅了されました。
本日の中国語キーワード
アンドレイ・ググニン:安德烈・古寧 āndéliè gǔníng
グリーグ:葛利格 gélìgé
チャイコフスキー:柴可夫斯基 cháikěfūsījī
くるみ割り人形組曲:胡桃鉗組曲 hútáoqián zǔqǔ
ストラヴィンスキー:史特拉汶斯基 shǐtèlāwènsījī
火の鳥組曲:火鳥組曲 huǒniǎo zǔqǔ
靴下:襪子 wàzi
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
次回のコンサートレポートもお楽しみに!
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