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【ブルース・リウ】ベドーヤ指揮 国家交響楽団とのショパンコンペティションツアー台北公演!

コロナ禍で異例の1年延期となった2021年第18回ショパンコンクールは、日本人ピアニストの大活躍と、コンペティターたちの華麗なる競演が大きな話題となりました。その優勝者であるブルース・リウ(劉曉禹)が昨年、ミゲル・ハース=ベドーヤを指揮に迎えた台湾の国家交響楽団NSO)と共演し、台北にてショパンピアノ協奏曲第1番を披露しました。少し時間が経ってしまいましたが、2023年11月に行われた台北での公演についてレポートします。

コンサートレポート

『力晶2023藝文饗宴-蕭邦大賽首獎得主音樂會《幻想之境》』

日時:2023年11月18日(土)19:30より

会場:國家音樂廳

ピアノ:FAZIOLI

ブルース・リウさんは同年の2023年6月にも台湾の高雄でNSOと共演し、ラハフ・シャニ指揮によるベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番を演奏しています。表題の公演は台湾での2回目となる出演で、台北では初の開催、演目も優勝をおさめた大会で演奏したショパンのピアノ協奏曲第1番ということで、注目の集まる公演でした。

 

ちょうどこの公演の前にドイツ・グラモフォンから最新アルバム『Waves』も発売されており、当日会場でのCDとレコードの物販も大盛況で、プログラムも完売、会場も満員で活気にあふれていました。

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台北での公演は2日間連続で行われましたが、第2日目(11月19日)の公演チケットは一般販売がなく、主催企業関係者向けにコンサートが行われました。この2日目の公演のメインスポンサーは、ショパンコンクールでもスポンサーとなっていたレクサス(ここではトヨタ/レクサスパートナーの台湾企業)でした。ヨーロッパの音楽イベントでも同様にスポンサーになっているレクサスは、ブルースさんをイメージキャラクターにCMも作っています。

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ちなみに、ショパンコンクール優勝後、世界各地でショパンのピアノ協奏曲を無数に演奏してきたブルース・リウさんでしたが、ショパンインスティテュートとの契約にある最後の公演がこちらの台湾公演だったとのことです。公演に先立っては前日の17日に会場となった国家音楽ホールで、指揮者ミゲル・ハース=ベドーヤさんと共に記者会見を開き、メディアの前では演奏も披露しました。

本日のソリスト🎹ブルース・リウ(刘晓禹)

今や言わずと知れた2021年ショパン国際ピアノコンクールの優勝者、ブルース・リウさんはカナダ出身の華人で、台湾や中国では漢字の名前「劉曉禹」(リウシャオユー)とも呼ばれています。(「刘晓禹」は中国の表記。台湾では「劉曉禹」)

干支は牛、星座も牛座(中国語では「金牛座」)ということで、小さい頃は「牛牛」(ニウニウ)というかわいらしいニックネームで呼ばれていたそうです。北京出身の両親の元に生まれ、幼少期をフランスのパリで過ごしてからカナダに移り、多様な文化背景の中に育ちました。夏休みなどの帰省以外中国に暮らしたことはないそうですが、英語に加えフランス語と中国語も流暢に操り、特に中国語に関しては、多くの華人2世代目が中国語習得のためにわざわざ中国留学していることを考えると、ここまで流暢なのはすごいことだと思います。

下のリンクは中国の音楽メディアに対し中国語でインタビューに答えている動画です。(英語字幕あり)中国メディアの取材だけあって、彼が外国育ちの同胞であることに着目した質問もあり興味深いところです(23分〜)。ブルースと名乗ったエピソードについても詳しく答えています(33分〜)。

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音楽以外にも、水泳、チェスやカートなど多趣味で、知的好奇心の旺盛さが伺えます。たくさんある趣味のひとつとして、7歳ごろからピアノを始めて音楽の才覚をあらわし、11歳ごろから音楽コンクールにも参加し始めました。2012年、15歳のときに、カナダのOSM Competitionで優勝して以降、日本でもおなじみの仙台国際音楽コンクールなど数々のコンクールで入賞を果たしてきました。モントリオール音楽院で学び、前回の記事でご紹介したダン・タイ・ソンがブルース・リウを指導した先生であることも有名です。

コンクールでの素晴らしい演奏はこちらから試聴できます↓

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本日のプログラム

1.  ショパン:ピアノ協奏曲第1番 Op.11

                     ♪♪ 途中休憩20分♪♪

2.  リムスキー=コルサコフ:交響組曲シェエラザード」Op.35

 

当日会場で行われた公演前レクチャー(無料で聴講できる30分ほどのミニ講義)から大行列でとても賑わっていた印象です。公演前レクチャーの講師は、台湾のピアニスト嚴俊傑(イェン・ジュンジエ)さんがつとめました。終わった後は、嚴俊傑さんと記念写真撮影をしているファンもたくさんいました。

開演15分前にはプログラムは売り切れてしまい、買えなかった人はQRコードで電子版プログラムをダウンロードできるようになっていました。席に着くと、お互いを「老師」「大師」(先生、大先生)と呼び合って挨拶する人たちをたくさん見かけ、やはり注目の公演だけあって音楽関係者がたくさん来ていたようです。

待ちに待ったブルースさんの台湾での出演で、会場の期待感、集中力ともにとても高かったです。ブルースさん特有の軽やかなピアニズムは、心地よさ満点で、そのエレガントさに身を任せながら聴いていたら、夢見心地のまま時間が過ぎ去ってしまいました。第3楽章後半に差し掛かると、いつにもなく、もう終わってしまうのか…と、名残惜しさでいっぱいになりました。

後半、リムスキー=コルサコフの交響組曲シェエラザード」は、中東の民謡集である『千夜一夜物語』をテーマとした曲です。シェエラザードとは物語の語り手の女性の名前ですが、生き生きとしたイメージを掻き立てられる壮大な旋律中には、シェエラザードを表すメロディーが登場し、この名曲の聴きどころになっています。オリエンタルで詩的なオーケストラの演奏を聴きながら、前半のブルースさんの演奏から続く夢見心地から醒めることなく、最後までうっとりと鑑賞しました。

終了後のサイン会はベドーヤさんとブルースさんが並んで一緒に行い、時間をかけて1組1組のファンと写真撮影、サイン、握手に応じていました。この日は会場で販売していたプログラム以外に、ブルースさんのCDとレコードにもサインOKということでした。

ブルースさんはファンが持ってきたプログラム紙面やCDジャケットに合わせて、手間をいとわずにペンを使い分け美しくサインをしていて、ファンは大喜びでした。ファンの問いかけにも本当に気さくに応じていて、ベドーヤさんのジェントルマンぶりと、ブルースさんのあまりのナイスガイぶりに圧倒され、この日からこのまましばらくの間、演奏中からの夢心地状態から醒めることはなかったのでした。

本日の中国語キーワード

ブルース・リウ:劉曉禹 liú xiǎoyǔ

国家交響楽団國家交響樂團 guójiājiāoxiāngyuètuán

ショパンコンクール蕭邦國際鋼琴大賽 xiāobāng guójì gāngqín dàsài

優勝/優勝者:冠軍 guànjūn

サイン会:簽名會 qiānmínghuì

アルバム:專輯 zhuānjí

レコード:黑膠 hēijiào

 

最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。

次回の台北コンサートレポートもお楽しみに!

 

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