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知られざる!? 台湾クラシック音楽文化の世界

【ダン・タイ・ソン】波乱万丈の世界的ピアニスト2024年台湾ピアノリサイタル

1980年ショパンコンクール伝説の優勝者、世界的大ピアニストである、ダン・タイ・ソンが、先日、台北と高雄にてピアノリサイタルを行いました。今月6月中旬からは日本公演も控えており、来日を待ち遠しく思っている方も多いのではないでしょうか。一足先に、台北公演のコンサートレポートをお楽しみください!

コンサートレポート

日時:2024年5月29日(水)19:30より

会場:國家音樂廳

今年、台湾での公演は「演奏家ダン・タイ・ソン」としてのコンサートが二公演、そして「教育家ダン・タイ・ソン」としての弟子たち4名とのジョイントコンサートが二公演、それぞれ開かれました。

 

ジョイントコンサート(6/5、6/6開催)

伝承—ダン・タイ・ソンと明日のスター音楽会」(Dang Thai Son and Prize Pupils)

ダン・タイ・ソンは同じくショパンコンクール覇者のブルース・リウを指導した先生であることも有名ですが、ピアニストとして演奏活動を行う傍ら、すでに30年もの長きにわたり、若手ピアニストたちの指導に尽力してきました。今回の訪台公演ツアーは、演奏者としてだけでなく教育者としての側面にも、さらにスポットを当てた特別なものだったのです。コンサートにあたってのラジオ局のインタビューでは「今回の公演を通して青年音楽家の素晴らしい演奏を皆さんに聞かせられる以外に、これまでの演奏家のイメージとは異なる、教育家ダン・タイ・ソンとしての一面も知ってもらいたい」と語り「自身の音楽哲学を伝承して行くことの重要性」にも言及しました。

 

ジョイントコンサートについてコメントするダン・タイ・ソン ↓

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本日のピアニスト🎹ダン・タイ・ソン

Photo Credit ©Hirotoshi Sato

1958年ベトナムハノイ生まれのダン・タイ・ソンは、現在カナダのモントリオールに拠点を置いています。ダン・タイ・ソン(鄧泰山)は、父が詩人、母がピアニストという芸術的素養の高い家庭に生まれました。中国の血筋も受け継いでおり、名前の「泰山」は中国の山の名前にちなみます。6歳からピアノを始めますが、ベトナム戦争の煽りを受けて環境が整わない中苦労しながら音楽を学びました。戦時下のハノイ音楽院で、少しでも多く練習をするために、紙の鍵盤で練習したというエピソードは大変有名です。その後、16歳でロシアのピアニストであるアイザック・カッツに才能を見出され、19歳のときにロシア(ソ連)へと渡りモスクワ音楽院で学びました。苦労を実らせ、ショパンコンクールでアジア人初優勝という快挙を成し遂げたのち、40カ国以上で演奏会を開き、各国の著名な指揮者、オーケストラと今も共演し続けています。上述の通り、演奏家としてだけでなく優れた指導者としても知られ、アメリカのオーバリン音楽院(Oberlin Conservatory of Music)やカナダのモントリオール大学で教鞭を執っています。

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本日のプログラム

フォーレ:3つのノクターン 第1番 Op.33-1 変ホ短調

     舟歌 第1番 イ短調 Op.26

ドビュッシー:二つのアラベスク

       マスク

       子供の領分

         1.グラドゥス・アド・パルナッスム博士

         2.象の子守歌

         3.人形のセレナード

         4.雪は踊っている

         5.小さな羊飼い

         6.ゴリウォーグのケークウォーク   

      ♪♪  途中休憩  ♪♪      

ショパン:3つのエコセーズ Op.72-3,4,5

                4つのマズルカ Op.24

     タランテラ Op.43

     ワルツより

     ・ワルツ 第15番 ホ長調(遺作)

     ・ソステヌート ワルツ 変ホ長調(遺作)

     ・ワルツ 第11番 変ト長調 op.70-1

     ・ワルツ 第10番 ロ短調 op.69-2

     ・ワルツ 第2番 変イ長調 op.34-1

     ポロネーズより

     ポロネーズ 第11番 ト短調(遺作)

      ・ポロネーズ 第6番変イ長調 Op.53英雄

かつてフランス植民地であったベトナムで生まれ育ったダン・タイ・ソンは、当時、フランスから流入した西洋の音楽文化にも触れていたそうです。ショパン以外にも、フランスの作曲家のレパートリーを得意とするダン・タイ・ソンならではのプログラムは、フォーレから始まりました。フォーレの上品で感動的な旋律は、演奏者、聞く者、どちらの心も揺さぶるものですが、ダン・タイ・ソンの、自己を律するような落ち着いたプレイスタイルで奏でられるそれは格別の味わいでした。演奏する姿を目の当たりに、まっすぐなサウンドがスッと耳と心に入ってくる感覚を味わい、この芸術的境地に至った今のダン・タイ・ソンフォーレドビュッシーが聞けて感動しました。続くショパンの演奏は、ワルツ第2番で華やかさを極め、ショパンの誇り高い精神が込められたポロネーズに移ります。特にプログラムの一番最後は「英雄ポロネーズ」ですが、この曲の後半部分は百戦錬磨のピアニストでも全身に負荷がかかるハードな一曲です。この「英雄」をプログラムの最後に据えたダン・タイ・ソンのピアノ演奏は、後半にかけて徐々に情熱を増していき、最後の和音を響かせると腕を高く振り上げ、四肢を解放するように全身でエネルギーを発散!次の瞬間、会場では地鳴りのような大拍手が起こりました。

本日のアンコール

ショパン  :ノクターン第20番 嬰ハ短調(遺作)

アンコールは第二次世界大戦中のポーランドワルシャワを舞台にした『戦場のピアニスト』でお馴染みのショパンノクターンでした。戦争に翻弄され、政治的な紆余曲折を経験してきたピアニスト自身の歩みとも重なるようなアンコール曲でした。

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終演後、サイン会の盛況を報告するFacebookの投稿 ↓

終演後のサイン会は、100人限定のところ演奏会を聴き終わった人たちが大量に駆けつけ、大通りまで人が並びました。お疲れのところ、終始どこまでも柔和な笑顔でファンにサインと記念撮影の対応をしていました。

本日の中国語キーワード

ダン・タイ・ソン鄧泰山 dèng tài shān

モントリオール蒙特利爾 méng tè lì ěr

ベトナム越南 yuè nán

ソ連蘇聯 sū lián

モスクワ音楽院莫斯科音樂院 mò sī kè yīn yuè xúe yuàn

戦場のピアニスト』(映画タイトル):戰地琴人 zhàn dì qín rén

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

次回の台北コンサートリポートもお楽しみに!

 

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