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知られざる!? 台湾クラシック音楽文化の世界

【マルティン・ガルシア・ガルシア】情熱の国からのピアニスト 超 “熱情” な台湾デビューリサイタル!

日本では「情熱の国」という異名を持つスペイン。そんなスペイン出身であり第18回ショパンピアノコンクールでは3位に入賞したピアニスト、マルティン・ガルシア・ガルシアさんが、台湾で初となるピアノリサイタルを行いました。

本題に入る前に、記事タイトルにある「“熱情”」についてちょっと説明したいと思います。これは「情熱(じょうねつ)」の書き間違いではなく、中国語の「熱情(ルーチン)」です。同じ「熱情(ねつじょう)」という言葉は日本語にもあり、音楽ファンにはベートーヴェンのピアノ・ソナタ第23番「熱情」でもお馴染みの言葉です。

中国語の「熱情(ルーチン)」は、日本語と同じ「熱く激しい感情」を表す意味のほかに、もうひとつ重要な意味があります。それは「心から温かく親切」という意味で、台湾人のフレンドリーで人情味あふれる気質を表す言葉としてもよく使われています。

積極的な態度で熱くおもてなしを尽くす台湾人に出会ったことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。まさにそれが「熱情(ルーチン)」です。

今回のマルティン・ガルシア・ガルシアさんのデビューリサイタルは、彼の持つ「情熱」と台湾の「熱情」が共鳴した、ファンの思い出に残る素晴らしい公演でした。それではコンサートレポートをお楽しみください。

 

コンサートレポート

力晶2024藝文饗宴《蕭邦大賽三獎暨協奏曲獎得主-賈西亞.賈西亞鋼琴獨奏會》

日時:2024年6月4日(火)19:30より

会場:國家音樂廳

ピアノ:FAZIOLI

今回は台湾3都市でのコンサートのみならず、台北FAZIOLIショールームでのトークショー(講演タイトル:「ショパン国際コンクールと私」)や、台北市立大学でのマスタークラス開催など、イベントも盛り沢山な充実した滞在でした。

本日のピアニスト🎹マルティン・ガルシア・ガルシア

マルティン・ガルシア・ガルシアさんは2021年クリーヴランド国際ピアノコンクール(Cleveland International Piano Competition)で第1位に輝き、ショパンコンクールでも第3位に入賞したのみならず、「コンチェルト賞」も受賞しています。そんな今最も注目を集める若きピアニストであるマルティン・ガルシア・ガルシアさんは、世界各国で精力的に演奏会を開き、数々のオーケストラとも共演しています。今年は満を持して新しいアルバム「EVEN-TIDE」をリリースしています。こちらには台湾のリサイタルで披露した曲も収録されていますので、ショパンコンクールの演奏アルバムとあわせて下からご試聴ください。

geo.music.apple.com

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今も残るショパンの生家で開かれたリサイタルのライブ配信アーカイブ映像がYouTubeで見られます。演奏しているピアノは当時のものだそうです。情熱ほとばしる演奏をぜひご覧ください。

本日のプログラム

ショパンポロネーズ第5番 嬰ヘ短調 Op.44

ショパン舟歌 嬰ヘ長調 Op.60

ショパン:24のプレリュード(前奏曲集) Op.28より第13番Op.28-13、第3番Op.28-3、第2番Op.28-2、第14番Op.28-14

ショパン :ピアノ・ソナタ第2番「葬送」変ロ短調 Op.35

         —途中休憩—

ブラームス:ピアノ・ソナタ第3番ヘ短調 Op.5

マルティンさんは黒い蝶ネクタイにスーツ姿で、颯爽と舞台に登場しました。マルティンさんといえば歌いながらの演奏も知られるところですが、生歌声もついに聴けたのが個人的に嬉しかったです。歌詞があるのか、同じ曲目でも歌の節回しは毎回違うのか、色々と知りたくなりました。彼の生み出すピアノの音色はマルティンさんの内側から湧き上がる「歌」でもあるのだと思いました。生き生きと瑞々しく、まさしく歌い上げるかのような演奏でした。一貫して大胆でダイナミックな中にも楽譜に忠実な繊細さと緻密さが光る演奏で、特にショパンのピアノ・ソナタ2番ではそれを強く感じました。そして演奏中、和音を難なく掴み取っている様子から、手が大きそうだなと思っていたのですが、ONTOMOのインタビュー記事の中に、手の大きさがわかる写真を発見しました。ドからソまで届く手とは、なんともうらやましい…!

ontomo-mag.com

本日のアンコール

グリーグ:トロルハウゲンの婚礼の日

ショパン:ワルツ第6番 変ニ長調 Op.64-1

アルベニス:ナバーラ (ナヴァーラ)

モンポウ:歌と踊り第6番

ショパン:ワルツ第14番 ホ短調 遺作

ラフマニノフ:楽興の時 第6番 Op.16-6

ショパン:ワルツ第7番嬰ハ短調Op.64-2

アンコールには故郷スペインのモンポウアルベニスの楽曲も選んでくれました。カーテンコールの度に鳴り止まない拍手と、大きさを増す歓声に応えて、なんと7曲ものアンコールを披露し情熱的な台湾デビューリサイタルを締め括りました。

はじける笑顔のサイン会

アンコールの演奏を終えて、すぐにサイン会の会場に登場したマルティンさん、サインをしてから顔をしっかりと上げ一人一人のファンとアイコンタクト、チャーミング極まりないはじける笑顔で「Thank you so much !」と言っていたのが印象的でした。7曲も弾いたアンコールについてファンからの問いかけがあると「もう自分でも何を弾いたかわからない!」と冗談混じりに気さくに答えていました。

Q&Aセッションを開催!

22時半に近づきやっとサイン会を終えたマルティンさんですが、まだまだ興奮収まらぬ中、Q&Aトークショーを開催。ファンからの質問にその場で答えるというもので、後日主催者のFacebookで質疑応答の概略を見ることができました。公演とアンコール、サイン会を終えてマルティンさんも疲れていたと思いますが、情熱的な嬉しいファンサービスです。台湾のファンの中には、公演後Q&Aでピアノ演奏以外の側面をたくさん知ることができたという喜びの声もありました。

SNSを通じてファン交流

コンサート主催者のSNSでは台湾到着後からのマルティンさんの様子もたくさんアップデートされ、コンサート以外でもファンを楽しませてくれました。滞在中は忙しい予定の合間を縫って台湾各地を楽しんだマルティンさんですが、台北公演後も台湾北部を巡る旅を満喫したそうです。ローカルのグルメや台湾茶を楽しむ姿がSNSにアップされ、どうやらマルティンさんにも台湾が気に入っていただけたと見え私も嬉しかったです。

これについては、ご自身のSNSでもシェアしていました。マルティンさんのSNSはときどき日本語でも発信されていますので、日本のファンの方、要チェックですよ。マルティンさんは空港でファンにビデオレターを残し、台湾を後にしました。

 

到着から出発のその瞬間までファンを楽しませてくれたマルティンさん、私も今回のリサイタルを通してすっかり彼のファンになってしまいました。アーティストの人柄に直接触れることができるのも、コンサート鑑賞の大きな魅力です。世界のどこかで、またすぐにマルティンさんの演奏が聞けることを楽しみにしています。

本日の中国語キーワード

マルティン・ガルシア・ガルシア:馬丁・賈西亞・賈西亞 mǎdīng jiǎxīyà jiǎxīyà

スペイン:西班牙 xībānyá

FAZIOLI : 法奇奧里 fǎqíàolǐ

熱情:熱情 rèqǐng

SNS社交平台 shèjiāopíngtái

 

今回も最後までお読みいただき本当にありがとうございました!

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