とまどいたいぺい

知られざる!? 台湾クラシック音楽文化の世界

【スティーヴン・リン(林易)】ピアニスト林易(リン・イー)と仲間たちによる室内楽コンサート

幼い頃からアメリカでピアニストとして活躍し、ジュリアード音楽院で学んだ才能溢れる若き台湾のピアニスト、スティーヴン・リンさんが、国際色豊かな若手アーティスト、TSO(台北市交響楽団)の楽団員たちと共に室内楽コンサートを開きました。

公演は2回、それぞれドイツ・フランス編、東欧編と異なったテーマのプログラムで開催されました。ドイツ・フランス編の公演に行ってきましたので、レポートいたします。

コンサートレポート

【TSO室內沙龍】TSO、林易與好朋友們─德法篇

TSO, Steven Lin & Friends

日時:2024年8月22日(木)19:30

会場:誠品表演庁(eslite Performance Hall)

出演:林易(ピアノ)、チョ・ジンジョ(ヴァイオリン)、ボリス・ボルゴロット(ヴァイオリン)、陳梅君(ヴィオラ)、蔡弦修(ヴィオラ)、エドガー・モロー(チェロ)、曾安立(フルート)、ムン・スンジュ(クラリネット)、曾韋晴(ハープ)

ピアノ:スタインウェイアンドサンズ

今回の会場は、このブログでは初登場となる「誠品表演庁」(eslite Performance Hall)です。台湾の「誠品書店」は東京の日本橋に進出しているので、日本でも「誠品(eslite)」という台湾ブランドをご存知の方がだんだん増えてきています。台湾に来られた際、お土産を探しに誠品にショッピングに行かれる方も多いかと思います。

「誠品」(チェンピン)は書籍を始め、雑貨、CD・レコード、ワインなど、MIT(Made InTaiwan)や輸入物の様々な商品を取り扱い、台湾カルチャーを牽引してきた有名ブランドです。ちなみに台湾は規模的には比較的小さな地域でありながら、出版業界が元気な国(みなさん本を買うのが好きなお国柄)なのだそうです。「誠品書店」は24時間営業で有名なのですが、松菸(ソンイェン)というところにある「誠品生活松菸」も24時間営業の書店があり、誠品ブランドのホテル、レストラン、音楽ホール、映画シアターも兼ね備えた複合施設です。その他、アパレルブランドや雑貨ブランドもテナントとして入っており、一帯の「松山文創園区」と共に最新台湾カルチャーの発信基地となっています。

音楽ホールは日本人建築家・伊東豊雄チームによる現代的なデザインのホールで、音響効果に優れていると言われるシューボックス型の設計です。収容人数は361人、クラシック以外にも様々なジャンルの公演、フォーラムや記者会見会場として使われています。

出演者はフランス、韓国などからのインターナショナルなメンバーで、台湾の奏者たちも海外で学んだ経験や演奏経験が豊富な方ばかりです。ピアニストのスティーヴン・リン中心に国際色豊かなメンバーが織りなす音色はとても繊細で素敵でした。

本日のピアニスト🎹スティーヴン・リン(林易/リン・イー)

幼少期から天賦のピアノの才能を発揮し、わずか10歳でジュリアード音楽院に全額の奨学金を受けて入学、その後若干13歳でニューヨーク・フィルハーモニックと共演した実力派で、近年はカーネギーホールチャイコフスキーピアノ協奏曲を演奏し、繊細さとダイナミックさを兼ね備えた演奏は、現地でも好評を得ています。2014年のルービンシュタイン国際ピアノコンクール2位に輝いた翌年、東京の浜離宮朝日ホールでの入賞者ガラコンサートに出演したほか、世界各地で精力的に演奏活動をしてきました。

ティーヴンさんはピアノ独奏、ソリストとしてのオーケストラとの共演のほか、室内楽を特に好み様々なアーティストと交流してきました。かつて韓国で発足した初の男性クラシック・ユニットDittoのメンバーだったこともあります。また近年の韓国のアグレッシブな音楽家育成環境にも多大な刺激を受けたというスティーヴンさんは、本格的に台湾に拠点を移してから、台北教育大学で若者の指導にも情熱を燃やしています。

アメリカ育ちのスティーヴンさんの英語混じりの中国語からは、独特なチャーミングさが感じられ、ピアノの実力もさることながら、スタイリッシュな雰囲気、端正なルックスもあいまって様々な世代のファンを惹きつけています。2024年はマネジメント会社とも契約して自身のイメージ戦略にもより積極的にアプローチをしています。さらなる魅力が溢れて止まらない、これからも世界を舞台に進化するスティーヴン・リンさんは大変注目の台湾のピアニストです。

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本日のプログラム

ラヴェル:序曲とアレグロ M.46

ナディア・ブーランジェ:チェロとピアノのための3つの作品

ファニー・メンデルスゾーン:管弦四重奏曲 変ホ長調

—途中休憩—

フェリックス・メンデルスゾーンピアノ三重奏曲第2番

今回の2公演は、今年度アーティスト・イン・レジデンスとしてTSOに招聘されたスティーヴン・リン企画による特別プログラムでした。この日のドイツ・フランス編のプログラムでは、音楽史上重要な女性作曲家に着眼点を置き、ブーランジェ、ファニー・メンデルスゾーンの作品を演奏しました。

各曲、パート編成が異なるのでメンバーが入れ替わり登場しました。韓国出身の女性ヴァイオリニストチョ・ジンジョのエネルギッシュなプレイスタイルにも惹きつけられましたし、全曲登場したエドガー・モローのチェロの音色にもしびれました。音楽を通じた演奏者同士のインタラクションが生む息ぴったりのサウンドは、会場のお客様と舞台上の結びつきをも深くしていたように感じ、鑑賞する会場の空気感もとても良かったです。プログラムの流れも流暢で、スティーヴン・リン、ボリス・ボルゴレット、エドガー・モローによる三重奏の終わりは、最高潮の雰囲気でフィニッシュ!会場から大きな拍手と歓声が沸き起こりました。室内楽にも精通したスティーヴンさんのキュレーションで、大ホールのオーケストラ演奏とはまた違ったアンサンブルの魅力を存分に感じることができる素敵な演奏会でした。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

ティーヴンさんは昨年中国人ピアニスト張昊辰の代打を急遽勤めた公演も素晴らしかったので、そちらも機会があれば記事として扱いたいと思います。

お楽しみに!

 

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