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【ヴィキングル・オラフソン】「ゴルトベルク変奏曲」世界ツアー台北公演

アイスランド出身のピアニスト、ヴィキングル・オラフソンさんが、昨年リリースしたアルバム「ゴルトベルク変奏曲」をプログラムにした全世界ツアーを行いました。

2023年から2024年にかけて行われたこの世界ツアーは、ピアノの鍵盤数にちなみ全88回の公演を行うという、非常に大規模でユニークなものでした。

世界各地で好評を得たこのコンサートツアーは、追加公演があった関係で、結局のところ88回にとどまらなかったのですが、台湾ではもともと第84回目と85回目の公演が予定されており、世界ツアーのフィナーレに差し掛かる公演場所となりました。

コンサートレポート

絢麗系列—歐拉夫森:巴哈《郭德堡變奏曲》世界巡演

(The Magnificent Series Víkingur Ólafsson Goldberg Variations World Tour)

日時:2024年6月12日 19:30

会場:国家音楽庁

ピアノ:スタインウェイアンドサンズ

公演前レクチャーの様子

このツアーでのコンサートは、ヴィキングル・オラフソンさんにとって記念すべき初めての台湾での公演ともなりました。追加公演を重ねたツアーは台湾に来た時点で、合計96公演にも上ったのだそうです。

台湾では二つの公演が台北と高雄の二ヶ所で行われました。ツアーは2023年8月にドイツからスタート、ヨーロッパ各国を回ってから、日本で公演が行われたのは2023年の12月ごろです。それから後半年ほどの間も、毎月絶えず、北米大陸、北欧、豪州など色々な地域を回っていました。

2024年5月からツアーはアジアに戻り、中国、シンガポール、香港を経由、そして6月ついに台湾へ到着。台湾の後はドイツへ戻って、この歴史的演奏ツアーはフィナーレを迎えました。

有料コンサートプログラム「節目冊」を紹介した記事でも触れましたが、ゴルトベルク変奏曲をデザインテーマにしたオリジナルグッズ販売も好評で、当日は長蛇の列となっていました。

オリジナルグッズのトートバッグとクリアファイルは、雑貨ブランド「サム・ミュージック・デザイン」とのコラボで、数量限定販売されました。オラフソンさんご自身のSNSでも披露されています。

本日のピアニスト🎹ヴィキングル・オラフソン

1984アイスランドの音楽一家に生まれたオラフソンさんは、幼い頃からピアノを学び、その後ジュリアード音楽院に留学しピアノを学んでいます。2016年からドイツグラモフォンと契約しアルバムをリリースしていますが、音楽配信SpotifyiTunesなどで絶大な人気を誇り、総再生数は数億回を超えています。クラシック音楽の編曲も手掛けるなど、ストリーミング時代の現在、伝統的クラシック音楽の「新鮮な魅力」を世界中のリスナーに届け続けている魅力的なピアニストです。

本日のプログラム

バッハ:ゴルトベルク変奏曲(アリアと30の変奏曲)ト長調 BWV 988

ゴルトベルク変奏曲』とは?

冒頭の「アリア」、30の変奏曲、「アリア」の再現部で構成され、演奏時間は合計約80分ほどにもなる、バッハ作曲の大作です。300年ほど前に出版されました。

30の変奏曲は「アリア」の低音主題に基づき作曲されていますが、この「アリア」のメロディーはとても有名で、映画やドラマの中にも度々登場しています。

2022年にNetflixで公開され台湾でも大人気だった、佐藤健さん・満島ひかりさん主演の『First Love 初恋』や、90年代に大ヒットしたホラーサスペンス映画『羊たちの沈黙』、その続編の『ハンニバル』にも登場するので、聞いたことがある人も多いと思います。

バッハを弾かない日はないほどバッハ好きだというオラフソンさんは、14歳の頃からこの作品に親しみ、25年もの長い時間を経てからレコーディングを行い、2023年、ついにアルバムをリリースしました。ゴルトベルク変奏曲は、ピアニストたちが、そのキャリアの中でも機が熟すのを待ち満を持してレコーディングに臨むことが多い、実に奥深い作品です。

バッハの厳密な指示が楽譜に残されていないことで、いまだに奏法について活発な議論もある中、ピアニストの個性が演奏に現れる余地ともなっています。様々なピアニストの演奏を聴き比べて楽しんでいるピアノファンも多く、グレン・グールドの演奏が有名ですが、オラフソンさんのアルバムは「グールド以来の衝撃」との言葉が日本のコンサートの広告にも書かれていたほどでした。

暗闇に浮かぶピアノ

舞台上のオラフソンさんはグリーンのスーツにオレンジのネクタイをお召しで、この日の装いもスタイリッシュで洗練されていてとても素敵でした。

客席は真っ暗に近いぐらい照明が落とされ、スポットライトを使いステージのピアノをぽっかりと白い光で照らすという演出でした。丸い形の光に眩しく照らされたピアノとピアニスト以外、何も見えないという演出で「没入感」を感じさせるステージでした。ピアニスト自身も暗がりの中バッハと向き合い、作品に没頭していたのではないかと思います。

そんな演出もあって会場の集中力はいつにも増して高く、私自身も周りが全く気にならず、1人で舞台と対峙しているように感じました。緻密で精巧、哲学を感じさせる演奏で、最後のアリアまで聴き終わったときには、はっきりした夢を見てから目覚めた朝、我に返ったような感覚を感じました。演奏中は日常から遠い世界に連れて行かれたようで、まるで究極の癒しのような体験でした。演奏終了時、会場は息を呑んだように沈黙、ピアニストが緊張から解き放たれた瞬間、割れんばかりの大喝采が起こりました。

舞台上から客席に向けてスピーチ

演奏終了後、鳴り止まない拍手に応える形で、オラフソンさんがピアノの前に立ち、英語で会場全体に挨拶をしました。会場のお客様へのお礼と、初めて台湾の舞台に立ち演奏したホールが気に入ったことや「バッハは元々、睡眠不足の男の人と14歳の少年、2人だけのためにこの曲を作りましたが、大勢の皆さんのために演奏できて嬉しい」などとゴルトベルク変奏曲の作曲背景に触れながらコメントし、会場には笑いも起きました。

台北公演ではアンコールがなかったのですが、それに関してもスピーチの中で「この曲の演奏後にアンコール曲を選ぶのは難しい。バッハがアンコールをもう曲の中に書いてしまったから。それでは、この後サイン会をしますね!」と、ゴルトベルク変奏曲最後のアリアの再現部を指してこう言い、会場には温かい拍手が起きました。

ピアニストの世界観を感じる美しい写真

主催者のSNSには公演の様子の写真もたくさんアップされました。本番だけでなくリハーサルでも撮影されたものかと思いますが、手元のアップや、ピアノの左右前後からのカットなど、どれも本当にきれいな写真ばかりで驚きました。

日程前後でのSNSの更新もたくさんあり、コンサートに関連する情報をチェックするのも楽しかったです。中にはタピオカミルクティーを嗜んでいるオラフソンさんの台湾らしい写真も公開され、台湾のファンを楽しませてくださいました。召し上がったのは日本にも出店している「春水堂」(チュンシュイタン)のミルクティーかと思います。

 

音楽性の魅力はもちろんですが、ファッションも素敵で独自のスタイルをお持ちのオラフソンさん、サイン会に登場した際、本当にいい香りの香水を纏っていらっしゃいました!できれば香水のブランドも知りたい(笑)

どなたかご存知でしたらお知らせください。

本日の中国語キーワード

ヴィキングル・オラフソン:維京格・歐拉夫森 wéijīnggé ōulāfūsēn

アイスランド冰島 bīngdǎo

ゴルトベルク変奏曲郭德堡變奏曲   guōdébǎobiànzòuqǔ

バッハ:巴哈 bāhā

タピオカミルクティー珍珠奶茶 zhēnzhūnǎichá

 

最後までお読みいただき、今回も本当にありがとうございました。

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