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知られざる!? 台湾クラシック音楽文化の世界

【表演芸術図書館・特殊展蔵室】(Special Collections Room)音楽愛好家のロマン溢れるコレクションの数々!

かつて台湾に「音楽界の騎士」と呼ばれた偉大な音楽愛好家がいました。

2006年にこの世を去った曹永坤(ツァオ・ヨンクン)さんです。

このブログで紹介した「表演芸術図書館」の奥には、曹永坤さんの膨大なコレクションの遺贈を元に作られた「特殊展蔵室(Special Collections Room)」という特別室があります。生前に収集されたクラシック音楽のレコードやCDが収められ、その数なんと7万点以上にのぼります。

特殊展蔵室(Special Collections Room)は、音楽ファン夢のオーディオルームさながらの空間で、貴重なクラシック音楽の資料に触れることができる特別な場所です。本日は曹永坤コレクションと「特殊展蔵室」についてご紹介いたします。

図書館についてはこちらの記事をご参照ください👇

曹永坤(ツァオ・ヨンクン)

曹永坤(1929-2006)さんは、台湾の音楽評論家・音楽愛好家です。台北市士林に生まれ、幼い頃から父親の影響でクラシック音楽を聴き、また教会のパイプオルガンの演奏に影響を受けながら音楽的素養を培いました。

台湾大学経済学部を卒業したエリートで、卒業後は金融機関などに勤めました。キャリアの中では日本での駐在生活も送っています。1960年ごろから始まった音楽関連品の収集は生涯にわたって続きました。

1980年代からはクラシック音楽関連のラジオ番組に出演したり、音楽雑誌に寄稿するなど音楽に関わる多方面で活躍し、退職後にも「台北鍵盤愛樂協会」を立ち上げるなど、活発に音楽評論家・愛好家としての活動を続けました。

台北市天母にあったご自宅のこだわりのオーディオルームは、日本のテレビ局が取材に訪れたほどだったそうです。また自宅サロンで定期的に多数のコンサートを催し、著名な音楽家を招いたのみならず、若手音楽家にも演奏の機会を提供しました。このサロンコンサートは2006年にこの世を去るまで、20年も続けられました。

曹永坤コレクションについて

音楽にまつわる収集品は、レコード、カセット、CD、DVD、各種音響機材、スピーカー、音楽関連書籍と多岐に渡ります。

自宅サロンには自らドイツに赴いて購入したスタインウェイアンドサンズのピアノや、イタリアのFAZIOLIのピアノのコレクションもあり、これらの素晴らしい楽器は自宅で開かれたコンサートで使用されました。FAZIOLIのピアノは308cm(!)のコンサートグランドピアノで、曹さんがオーダーした当時は世界最大の特別なものでした。

生前には、国立台南芸術大学の前身である国立台南芸術学院に、1000枚のCDを寄付しました。亡くなったのちに、自身のコレクションを台湾の音楽ファンと分かち合いたいという曹永坤さんの意思を尊重する形で、スタインウェイアンドサンズのピアノと6000冊に上る芸術関連の書籍が国立台北芸術大学に寄贈されました。

その他7万点にのぼるレコードとCDなどの貴重な資料は国家両庁院に寄贈され、その後オープンした「特殊展蔵室(Special Collections Room)」に収められることになりました。上で紹介したFAZIOLIのピアノも同じく国家両庁院に贈られています。

曹永坤さんの個人コレクションは今や、たくさんの人に音楽文化を広める貴重な公共資産になっています。

特殊展蔵室(Special Collections Room)

そんな貴重な品に触れられる特殊展蔵室は、2009年10月30日から一般市民に公開されています。ここは図書館同様、誰もが利用できる空間です。

特殊展蔵室内の資料は貸出不可のものがたくさんありますが、身分証の提示で無料の会員登録をすることで、図書館内での閲覧・試聴が可能です。音響機器、膨大な数のレコードとCDがつまっている音楽ファン垂涎の空間です。

レコードの中には1950年代のソ連からのものなど大変貴重なアイテムも含まれます。当時台湾で検閲を受けてやっと海外から購入したものも多いのだそうです。また館内に展示してある1930年代の美しい蓄音機も同氏から寄贈されたものです。

貴重なレコードを試聴!鑑賞の手順

数々の作曲家作品が網羅された曹永坤コレクションの中でも、マーラーの作品は特にコレクション数が多いそうで、レコードだけで約140枚、CDは360枚にも及ぶそうです。その中の一枚、1963年ドイツグラモフォン発行のマーラー大地の歌を最近図書館で鑑賞しました。西ドイツからのレコードです。

マーラー大地の歌

ナン・メリマン(メゾソプラノ)エルンスト・ヘフリガー(テノール

オイゲン・ヨッフム(指揮)アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団

geo.music.apple.com

鑑賞の手順ですが、まず鑑賞したい作品を探し、図書館のスタッフに声をかけて、会員登録内容を確認します。手続きが終わったらイヤホンを借り、再生機器に案内してもらいます。スタッフさんは近くの見えるところにいるので、レコードを裏返すときや、聴き終わったときの機器操作もスタッフに一声かけます。鑑賞が終わったらカウンターにレコード・CDとイヤホンを返却し終了です。

収蔵コレクションの検索はこちらから👇

作曲家の名前の隣のレコードとCDのアイコンから作品を探すことができます。

 

曹永坤さんが亡くなってもうすぐ20年。

膨大なクラシック音楽にまつわる個人コレクションは、それ自体が大変稀で貴重な存在ですが、現在このような形で市民に公開されていることが素晴らしいことだと思います。

台湾といえば、日本ではB級グルメやレトロな街並みなどが常に注目の的になっていますが、このような台湾の文化的側面は、まだまだ知られていないことが多いと思います。今後も少しずつこのような台湾文化を紹介していきたいと思います。

こちらの記事で紹介した国家両庁院についてはこちら👇

今回も最後までお読みいただき本当にありがとうございました。

 

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