とまどいたいぺい

知られざる!? 台湾クラシック音楽文化の世界

【アレクサンダー・ガジェヴ】台湾デビューリサイタル!台北公演

9月となり台湾は新学期を迎え、新しい始まりの季節となりました。

前回紹介した「中元節」が終わると思いきや、今度は「中秋節」が迫っております。

今年の夏休みシーズンを振り返ると、宇多田ヒカルさんの台湾初ライブが話題になりました。チケットはもちろん争奪戦で、抽選販売方式が採用されたそうです。

今月から年末にかけても、ONE OK ROCKOfficial髭男dism、藤井風、来年初頭にはYOASOBIなど、日本の人気グループ・歌手も続々と台湾公演を予定しています。

クラシック音楽でも、今年後半にかけての注目のアーティストのコンサートや、ピアノリサイタルの予定が次々に発表されており楽しみです。

今回の記事は今年の夏休みの思い出となりました、7月に行われたアレクサンダー・ガジェヴさんの台湾デビューピアノリサイタルについてです。

コンサートレポート

力晶2024藝文饗宴《榮耀時刻-加吉耶夫首度來台鋼琴獨奏會》

Powerchip 2024 Classic Series - Alexander Gadjiev Taiwan Debut

日時:2024年7月22日

会場:国家音楽ホール

ピアノ:スタインウェイアンドサンズ

冒頭では続々と台湾へやってくる海外アーティストについて触れましたが、コロナ禍による台湾の水際対策はかなり厳しく、外国人の入境が本格解禁されたのは去年の後半ぐらいのことです。

そのためか2021年のショパンコンクール入賞者たちの台湾リサイタルデビューは日本よりも遅く、2023年末の反田恭平さんを筆頭にやっと実現し、2024年に入ってマルティン・ガルシア・ガルシアさん、アレクサンダー・ガジェヴさんが次々とデビューリサイタルを行いました。ガジェヴさんは入賞者の中でもいち早く予定されていたリサイタルが延期になったという経緯もあり、ファンも待ちに待った公演となりました。ちなみに先週ブルース・リウさんが12月のリサイタルデビュー日程を発表したばかりで、台湾のピアノファンにとって2024年は嬉しい年となりました。

ガジェヴさんの台湾公演は、台北と高雄での2公演が行われました。マルティンさんの公演に続いて行われたため「3位を聴いたら2位を聴こう」とプロモーターさんが宣伝していたのが興味深かったです。

そういえば、マルティンさんが台湾を去るとき動画に残したコメントの最後で、友人でもあるガジェヴさんの公演が予定されていること、そしてガジェヴさんの公演でマルティンさんのCDが買えるよと宣伝していたのですが…本当に売ってました!

geo.music.apple.com

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本日のピアニスト🎹アレクサンダー・ガジェヴ

スロベニアと国境を接するイタリアの多元的な文化背景の中、音楽家の両親のもとに生まれたアレクサンダー・ガジェヴさんは、幼少期からピアニストとして活躍しています。2021年のショパンコンクールでは見事2位に輝き、クリスチャン・ツィメルマン賞も受けています。2015年の浜松国際音楽コンクールで優勝した際KAWAI SK-EXを弾いていましたが、ショパンコンクールでもKAWAI SK-EXを選択しました。浜松駅のカワイの駅ピアノを見に行った際、流れている映像にもアレクサンダー・ガジェヴさんが映っていました。カワイショップで見かけたガジェヴさんのポスターも記憶に新しいところです。私は個人的にカワイピアノのファンなので、カワイ目線(?)でガジェヴさんにかなり勝手に注目しておりました。いつかどこかでガジェヴさんのKAWAI SK-EX生演奏が聴きたいというのが私の密かでニッチな願いとなっています。

ガジェヴさんは日本のさまざまなホールで素敵な演奏会を多数行っていらっしゃいますが、9月はなんと法隆寺の舞台でも公演予定とのことです。趣向を凝らしたプログラムによる、ガジェヴさんにだけしかできない演出のコンサートはファンを惹きつけてやまない魅力となっています。

本日のプログラム

リスト:詩的で宗教的な調べ「葬送」S.173 No.7

ショパンマズルカよりOp.6-1、Op.24-2、Op.50-3、Op.68-2、Op.56-2、Op63-3

ショパンポロネーズ第6番「英雄」

—途中休憩—

ショパン前奏曲Op.28よりNo.23、No.22、No.18、No.13、No.10、No.2

スクリャービン:ピアノ・ソナタ 第9番「黒ミサ」 変ホ短調 Op.68

ベートーヴェンエロイカ変奏曲Op.35

 

会場が暗くなるとガジェヴさんからのメッセージが会場に流れ、聴衆は2分間の静寂の世界へといざなわれました。

照明が限りなく落とされた暗闇の中で、いつもはざわつきがちな台湾の会場が静寂に包まれました。会場の国家音楽庁は空調システムにこだわったホールでもあり、いつでも快適な温度なのですが、この日は会場の空気をさらにフレッシュに(神聖にすら)感じました。

時間が終わりに近づいた頃、ガジェヴさんが足音を立てずに舞台に登場します。目を閉じ瞑想に集中していた人にとっては、明るくなった舞台にいつの間にか突如としてカジェヴさんが現れたように感じたのではないでしょうか。最初はスポットライトだけ、後半にかけて舞台は徐々に明るくなっていきました。

瞑想時間を経て、聴衆はガジェヴさんのカリスマに完全に引き込まれました。この日の会場の集中力はとても高かったと思います。ガジェヴさんの演奏はまるで静かなる扇動で、彼の音楽世界に完全に聴衆を連れて行ってしまうようです。最後まで彼の音楽に身を任せていれば大丈夫という感じでした。このような感じは中国語で表現すると「有說服力」とか「完全被征服」とか…なぜか中国語で形容する表現が浮かびましたが(笑)とにかく演奏に圧倒的な説得力を感じました。

本日のアンコール

ベートヴェン/リスト:Symphony No. 7 in A major, Op. 92 - II. Allegretto

スクリャービン:Étude, Op. 8 No. 12

スクリャービン:Étude, Op.42 No. 5

ショパン:Nocturne, Op. 15 No. 1 in F major

終演後のトークショー

サイン会を終えてこの日もトークショーが企画され、たくさんのファンが会場に残っていました。マイクを渡されたガジェヴさんが早速「ポン!ポン!」と言ってマイクテストしていて、明るく飄々としたキャラクターに親しみを感じました。

様々な質問をファンから受け付け、ガジェヴさんの回答を中国語で通訳していたのですが、通訳さんとのやり取りでは笑いが起こる場面もありました。質問は忘れてしまいましたが(確かショパンコンクール前のショパンだけに集中しなければならない期間について)、印象に残っている回答は「(作曲家に)深く入り込むために練習を本当にたくさんたくさんするが、一度深く入り込めば、そこから戻ってくることは簡単なんだ」とおっしゃっていたことです。

 

それにしても台湾の方は積極的に英語を使って質問をしていて、台湾の方のコミュニケーション能力の高さも感じました。上手いか下手かに関わらず英語で話すことの積極性は、アジア各国でも台湾人はピカイチだと常々感じて思います。(見習いたい)

 

最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。

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